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ツチノコ捜索隊 二〇二四年 調査報告書

2024年5月30日(木)
AD 佐藤

6:00

捜索隊の朝は早い。しかし、ここ新宿の朝はもっと早い。
駅前はすでに人波でごった返しはじめている。
昨晩~未明まで続いた荒天が嘘のような快晴。
雨の後はエサを求めて動物たちが動き出す。それはツチノコも同じか・・・

7:15

早朝の出発ということもあってか、車内は静寂そのもの。隊員たちはみな目を閉じ、ツチノコ発見にむけてのイメージトレーニングを行っている。


通称「ツチノコロード」
道路両側の覆いがツチノコの腹部に見えることから地域住民にはその名で親しまれている。
かつてはこの街道を、ツチノコを一目見んとする人々が埋め尽くしていたそうだ。この先に、我々が探し求めているものがあるのか。それは神のみぞ知る。


新人隊員O君は初の遠征に前日一睡もできなかったらしく、少し興奮気味。


車窓からの景色も次第に灰色から緑へと変わっていく。

8:20

現場に到着。ベースキャンプの設営を開始。

9:30

ベースキャンプの設営完了、まずは近隣に聞き込みを行い、調査の網を狭めていく。

11:45

ツチノコ発見への糸口となる情報を、地元の学生から手に入れることができた。

彼女たちの祖父母たちの代まではツチノコを見たことがある人のほうが多かったらしい。
この集落の老人たちはツチノコのことを「御子様(みこさま)」と呼び、「御子様」が里に現れることは地震や地滑りなど、土に関する災いが起こる前触れとしていたそうだ。
土の災いを知らせる御子、つまり「土の御子」が訛り、転化して「ツチノコ」に変わったというのは飛躍しすぎだろうか?


そして別の子は、老人たちが「御子様の巣」と呼び、畏れて立ち入らない場所があることを教えてくれた。昔は祠や社が立ち、御子様を祀っていたらしい。
しかし過疎化と近代化の煽りを受けて御子様信仰も希薄になっていったようで、今では御子の巣は面影もなく薄暗い雑木林となっていた。

「わるいこは みこさまのすに おいてくるよ」


「御子の巣」写真。かつてはここに祠があったそうだ。昼でも薄暗くひんやりとしていて、何もなくとも立ち入るのを躊躇してしまうような雰囲気がある。言うことを聞かない子供のしつけに使われるのも納得だ。

13:00

午前中だけでかなりの収穫があった。
ひとまず腹が減っては戦はできぬということで、食事休憩とした。

先程話をした地元の学生がベースを訪問してくれた。去り際に「もう帰った方がいい」と言っていたが、いったいどういう意味だったのだろうか?

14:00

調査継続。不思議なことに、昼前とはうってかわって人が一人もいない。

民家の前を通っても、窓はおろかカーテンまで閉まっている。まるでこの集落から拒絶されているような感覚すら覚える。人はいないはずだが、誰かに見られているような気がする。

18:00

暗くなってきたので調査は終了とする。
今回も残念ながらツチノコを発見することはできなかったが、新人隊員O君との絆という、何物にも代えがたい宝を手に入れることができた!

~調査終了~